明治時代

小学生の頃、この時代がとても好きだった。しかし、私が成長するにつれ、そして、世間で龍馬ブームが起こっていくにつれ、明治というものに非常に懐疑的な気持ちを抱くようになった。

そんな私でも、明治期の本でお気に入りがある。それは、小学生の頃に見たNHKの教育番組で、部分的にそしてほんの少し取り上げられた、中江兆民の『三酔人経綸問答』というものだ。

 

中江兆民という人は、「土佐派の裏切り」にキレるとか、女好きとか、まぁ、結構な奇人なわけだが、上のテクストはあまりに常人のものである。

中身を要約すれば、右派、左派、中道の対立で、軍事強硬、平和外交、両方のミックスと言い換えれば良い。

ごくごく普通の内容だが、「今と何も変わってないじゃん」という一点がすごく怖いと同時に、面白いのだ。

 

人々が明治に憧れを持ってしまうのは、それは今が不況の持続で、何もない中で希望を見出そうとするからであるのは自明である。

ただ、兆民のこれを読む限り、明治から今の間に、あんな胸糞悪い爆弾を無数にあるいは2個落とされても、何も変わっていないということがはっきりわかるのだ。もちろん、兆民は一次大戦も二次大戦も知らずに亡くなっているのだが、彼の筆のどこかに、「今もそして未来も何も変わんないからさ...」という息切れを感じるのだ。

 

明治に、今との差異を見出すことによる満足ではなく、明治に、今との無差異を暴露することによる不満が必要なのであり、そういった点で歴史マニアには哲学がない。